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「ゲームに政治を持ち込まないで」――ロシア軍のウクライナ侵攻に関する声明や行動をしたArma 3、Cyberpunk 2077、Factorio、This War of Mineなどに低評価レビュー相次ぐ

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 2022年2月24日に発生したロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、AAAゲームデベロッパーや独立系デベロッパーはさまざまな声明、行動を起こしています。筆者が見掛けた一例を紹介すると以下の通り。

  • 11 bit Studios:ポーランドを拠点にする11 bit Studiosは2月25日、「私たちの隣国であるウクライナがロシア軍の攻撃を受けた。反戦ゲーム『This War of Mine』の制作者であり、戦争によって影響を受けた民間人の苦しみや悲惨さを直接語るものとして、我々はロシアのウクライナ侵攻に反対します」とし、7日間で得られた全ての収益をウクライナ赤十字社に寄付すると発表(ツイート)。3月4日に85万ドルを寄付したと発表した(ツイート
  • Bohemia Interactive:チェコを拠点にするBohemia Interactiveは3月2日、「ウクライナで人道的危機が起きている」として「Arma 3」と国際人道法をテーマにした「Laws of War DLC」を合わせた「Arma 3 Charity Bundle」を2週間限定で発売。Bundleで得られた全収益を赤十字国際委員会(ICRC)などの人道支援慈善団体に寄付するとしている(公式ブログ
  • Wube Software:チェコを拠点にし、Factorioの開発元であるWube Softwareは3月2日、「ウクライナを支援します」というニュースの中で「ロシアのウクライナ侵攻は、私たちに直接影響を及ぼします。ウクライナにはチームメンバーや友人がいます。現地の情報を直接得ています。ロシア軍の行動に弁解の余地はありません。私たちはウクライナを支援し、救援活動に寄付しています。ロシア政府の行為に反対するロシア人を支援します」と発表した(Steam
  • CD PROJEKT RED:ポーランドを拠点にするCD PROJEKT REDは3月3日、「ウクライナへの侵攻に関係のない現地ゲーマーにはご迷惑をおかけすることになりますが、我々企業が力を合わせることで、いま欧州で起こっている問題により多くの注目を集められればと考えています」としてCD PROJEKT REDが手掛けた全製品についてロシア・ベラルーシへの販売を停止し、運営するプラットフォームである「GOG.COM」も同様の措置を取ると発表した(公式ツイート
  • Necrosoft Gamesを始めとする733人のクリエーター:非営利医療支援団体のInternational Medical Corpsと子ども向け慈善団体のVoices of Childrenに寄付する「Bundle for Ukraine」をitch.ioで公開。Bundleページにて「ウクライナの人々が攻撃を受けています。ゲーム開発者として、私たちは今ある世界を破壊するのではなく、新しい世界を作りたいと考えています。ウクライナの人々がこの試練を乗り越え、戦争が終わった後も繁栄できるようにするためクリエイターたちは団結しました」と発表している(Bundleページ

 一方で、こうした声明や行動に「ゲームに政治を持ち込むな」という趣旨の低評価レビューが相次いで投稿されています。

This War of Mineのレビューグラフ。3月1日から10日間で648件の低評価レビューが投稿された。

Arma 3のレビューグラフ。3月1日から10日間で283件の低評価レビューが投稿された。

Cyberpunk 2077のレビューグラフ。3月1日から10日間で4351件の低評価レビューが投稿された。

Factorioのレビューグラフ。3月1日から10日間で756件の低評価レビューが投稿された。

 いずれもレビュー爆撃対策を実装しているSteamの実装により、レビュースコアから除外されました。同じ時期に投稿された正規の高評価、低評価レビューもレビュースコアから除外されるため、正規ユーザーのレビューがデフォルトでスコアに反映されないという影響が出ています。

 スレ違いとしてカテゴライズされたレビューを眺めてみると、ロシア語や中国語で投稿されていて、ゲームの開発元が今回のロシア軍によるウクライナ侵攻について声明を出したこと、行動を起こしたことを批判しています。中国語、英語、ロシア語の三ヶ国語で投稿している例もあり、レビューの内容のほとんどは「ゲームに政治を持ち込まないで」という趣旨の投稿です。

 This War of Mineのストアページで投稿された低評価レビューの例としては「米国が過去に起こしてきた戦争はこれだけあるが、米国やその同盟国が空爆して犠牲となった民間人を誰が補償するのか?」と米国が起こした戦争の歴史年表を取り上げているレビューや「戦争を利用して利益を上げようとしている」と批判するレビューもありました。またここには書けないレベルの誹謗中傷をしているレビューもあります(全てのアカウントがそういったレビュー爆撃をしているわけではなく、中国ユーザーが低評価レビュー爆撃について謝罪するレビューもありました)。

 こうしたレビュー爆撃を受け「Steamというプラットフォーム全体でロシアを締め出すべきだ」という話も出てきています。しかしゲームを購入したり遊ぶ権利を制限したりすれば海賊版が出回るだけだという批判もあります。それを裏付けるように、ロシアでは海賊版サイトが復活したという報道も出てきています。

ロシアで「違法アップロード」サイトが堂々復活!理由は正規版「サポート停止」 - すまほん!!
中国「IT之家」が3月7日のロシアメディア報道をもとに伝えたところによると、2015年にロシア政府によって閉鎖された「RuTracker.org」が、このほど禁止を解かれました。このサイトは、ロシア最大の違法アップロードサイトでした。かつて4430万のユーザー数を擁していたとのこ...

ロシアのゲームデベロッパーも声を挙げるが……

 ロシア軍のウクライナ侵攻について、ロシアのゲームデベロッパーも声を上げています。

  • FourQuartersLoop HeroPlease, Don’t Touch Anythingの開発元であるFourQuartersは2月25日、「私たちは戦争に反対です」とTwitterに投稿した(ツイート
  • Gaijin EntertainmentWar Thunderの開発元でありロシアに本社があるGaijin Entertainmentは2月28日、「Gaijin Entertainmentのオフィス、経営陣、ディレクター、サーバー、従業員はEU諸国を拠点にしているため、ゲームサービスが止まることはありません。戦争はビデオゲームの中だけに留めておくべきだと、私たちは強く信じています。世界の平和と安全を祈っています」と発表した(公式サイト
  • Ice-Pick LodgePathologicシリーズの開発元であるIce-Pick Lodgeは2月28日、「私たちが住み、その歴史と文化を尊敬し、愛している国の軍隊が、ウクライナで戦闘を開始しました。Ice-Pick Lodgeは、常に政治と無縁でした。私たちは今、私たちの名前で犯罪が行われていることを目の当たりにしています。これは、私たちの友人に対する犯罪だけではありません。私たちの尊厳に対する犯罪でもあるのです。沈黙は同意と見なされます。許しがたいほど遅れてしまったかもしれませんが、このメッセージを発表することにしました。これは、私たちの立場を表明するだけでなく、何よりも、私たちのゲームの制作に参加した5人のウクライナの友人たちに主に訴えるものです。私たちは、現政権とその政治路線に賛成したことは一度もありません。違法かつ流血の行動を支持したことはなく、これからも支持しません。和平交渉の成功を祈りましょう。この悪夢はすぐにでも終わるはずです」と8人の連名でメッセージを投稿した(ツイート

 しかし、ロシア国内では3月4日に「軍事行動に関する『偽情報』の拡散に対して最長15年の懲役刑を科す」とした法律が成立されるなど侵攻に関する声明を出すこと自体、危険な状況になっています。

ロシア、フェイクニュースと見なせば禁錮刑に 欧米メディア取材停止:朝日新聞デジタル
ロシアのプーチン大統領は4日、ロシア軍の活動に関する報道や情報発信のうち、ロシア当局が「フェイクニュース」(偽情報)と見なした場合に、記者らに対して最大15年の禁錮刑を科せる法案に署名した。刑法に新…

 厳しい言論統制が課されている中で、ロシアのゲームデベロッパーが昨今の動きについて声明を出すなら、どのような内容にせよ、ぜひメディアが拾ってあげてほしいところですね。