日本のインディーゲーム開発者・サークルなどに対して、販売権の売却を提案し、契約出来たゲームから中国語や英語に翻訳した上で、Steamストアで2ドルから4ドルという低価格で販売するパブリッシャーがあるという話を耳にしました。
今回は、販売権利購入と低価格戦略で利益を上げているとみられる中国パブリッシャーの「SakuraGame」について、分かっている事をまとめてみました。
SakuraGameとは
もともとはデベロッパーとして、2016年8月にノベルゲームの「Super Star」、2016年11月に早期アクセスゲームとして横スクロールアクションの「Dragon Knight」をリリース。その後も継続してアップデートを続ける一方で、ゲームの販売業務も手がける中国企業です。
Twitterには「@SakuraGame2017」というアカウントがあります。ツイート内容を見てみると、全てのツイートが開発者に対する売却提案のツイートとなっています。
https://twitter.com/SakuraGame2017/with_replies (アーカイブ)
また、開発ブログのコメント欄に登場している例もありました。興味を持ったゲームの開発者に対して声をかけているという状態が続いている様です。
上記のコメントが、SakuraGameかは分かりませんが、もしそうだとすると、2006年から活動をおこなっていると思われます。2005年から2008年の範囲でGoogleで調べてみたものの、SakuraGameではヒットしませんでした。別の名称で活動していたのかもしれません。
また微博でも、このメールアドレスや名前について検索をかけたのですが、公式と思われるアカウントやサイトは見つけられませんでした。
SakuraGameが販売しているゲーム一覧
SakuraGameが開発・販売しているゲームを除き、販売権を得た上で販売していると思われる作品の一覧についてまとめました。Steamストア価格と日本語版価格もまとめています。
Steam版ゲームタイトル | 日本語版ゲームタイトル | Steamリリース日 | Steam価格(円) | 日本版価格(円) |
Dragonia | ドラゴニア -ドラゴンの涙と龍族の娘フィーネ- | 2017/05/30 | 198 | 756 |
Material Girl | 女子校生サクラの貧乏奮闘記 | 2017/06/20 | 198 | 1944 |
Dark Elf | ダークエルフのヒストリア | 2017/08/04 | 398 | 1944 |
The Heiress | 没落令嬢-ボツラクレイジョウ- | 2017/08/11 | 398 | 1944 |
Les Fleursword | 剣が花に沈むとき | 2017/08/24 | 198 | 1404 |
Cat Girl | 女怪盗シルバーキャット | 2017/08/26 | 98 | 2160 |
Killing Time | ディストピアの略奪者 ―The weakest go to the wall― | 2017/09/21 | 198 | 1944 |
Tricolour Lovestory | 三色絵恋(※中国発のタイトル) | 2017/09/21 | 198 | ー |
Crimson Memories | 鴇色に萌ゆる心 茜色に燃ゆる記憶 | 2017/10/03 | 205 | 1404 |
Otaku’s Fantasy | 好きなだけ種付けセックスして、みんなに喜ばれる世界!! | 2017/10/11 | 198 | 1944 |
現状で販売されているのは以上の10作品ですが、2018年明けまでに、現時点で13本のゲームを販売予定としています。中にはもちろん日本語のタイトルも含まれています。
SakuraGameの翻訳の品質について
日本のR-18ゲームを中心に、海外ゲーム一色だったSteamに新たなジャンルのゲームを販売してきたパブリッシャーのSakuraGameですが、翻訳の質が悪いという指摘があります。
以上の低評価レビューやフォーラム、Twitterの反応は一例ですが、翻訳の品質について指摘する声が多いということは確かです。
また、先日には「My Sister’s Discipline Log」(日本語版タイトル:妹が痔になったので座薬を入れてやった件)がSteamで発売されたものの1日で削除されました(SteamDB)。このゲームは、小児性愛(ペドフィリア)を助長するタイトルとしてコミュニティで騒動になった事で削除されたようです(情報元)。
このタイトルが削除された事に関する声明や対応は見られませんでした。
SakuraGameが販売権を買って販売を続ける理由
Steamストアから問答無用でゲームを削除されたとしても、販売権を買って販売を続けるのはなぜでしょうか?もしかすると、多額のお金を支払って購入したとしても低価格戦略によって、すぐに回収出来るからかもしれません。
実際にいくらぐらいになるか、統計サイトのSteamSpyの情報を見ながら検証しました。
今回の検証では、Material Girlの購入者数を利用しました。そして、Twitterの情報を元に、ゲームの販売権を3万ドルで買っていると仮定します。販売されたゲームの収益は、3割がSteamに、7割がパブリッシャー(デベロッパー)に分配されます。
現時点での購入数は約209055本で中国からの購入が64%を締めています。中国では11元(日本円で187円)で販売されている事を踏まえて計算してみましょう。
209055*0.64*187*0.7=17,513,791円(1751万円)
この計算での中国からの売り上げは約1750万円という事になります。もし、300万で販売権を買っていたとしたら、ゲームが1750万円で売れたという事は元が取れたといえるでしょう(実際の買収額は不明ですけど)。
また、Material Girlをはじめ一部のゲームはSteam コミュニティマーケットに対応しています。
このマーケットではゲームに関連するトレーディングカードや絵文字、プロフィールの背景画像が取引されており、ここからも利益を上げる事が可能となっています。実際にはもっと利益が上がっていると考えられます。
低価格戦略には中国国内でも反発の声?
SakuraGameが、2ドル~4ドルでビジュアルノベルゲームで利益を上げている事を明らかにしましたが、中国発のTricolour Lovestoryが2ドルで販売されていた事には、中国国内でも反発の声が上がっている様です。
ビジネス的にはありという様な意見も書かれている様ですが、考えられない価格と指摘している人も居ます。100枚CGでボイスありのゲームが198円というのは、他の開発者にも影響を与えそうな金額をしていると思います。
おわりに
ここまで、SakuraGameが販売するゲームとその低価格戦略と問題について、まとめました。
販売権を売却する事で世界に向けてゲームが公開出来るという点や、翻訳の品質はさておき、多言語にも対応するという点では、開発者にとってはメリットとなっている事も事実です。
ユーザー側が「売るな!」とかそういう事を言っても無駄なのは分かります。ただ、販売権を売却する事を検討している開発者様に置かれましては、売却する前に、自分が開発したゲームを販売する権利を放棄する事の意味を考えていって欲しいなと願うばかりです。
今後も、SakuraGameに関する詳しい記事がぼちぼち出てきそうな気がするので、情報が入り次第追記していきます。
[2017/10/25 追記]
TwitterやRedditで本記事が広まり、この問題を掘り下げている記事も登場しています。開発者にいくら入るのか?という点については、こちらの記事に正確な情報が載っているので興味のある方はこちらもどうぞ。